きみの愛なら疑わない

(愚かな女と嫉妬する女)

◇◇◇◇◇



「美麗さんは慶太と結婚するんですよね?」

「そうだよ」

私が母と暮らすボロボロのアパートの一室で美麗さんは自分の家のようにくつろいでいる。
この部屋に不釣合いなブランドのワンピースを着て、城藤の家と比べたら寝心地が悪いであろう私のベッドに寝転がっている。

「じゃあどうしていつまでも匠から離れないんですか?」

「だってぇ……美麗が必要だって言うんだもん」

「匠がですか?」

「うん。美麗と一緒にいたいって」

一時の感情で結婚を控えているのに他の男のそばに居ることは間違っている。慶太は美麗さんを信じているはずなのに。

匠から離れない理解しがたい理由を平然と言ってのける美麗さんは、寝転びながら前撮りしたウエディングドレスを着た自分の写真を何度も見ている。それは婚約者以外の男と寝ている女の態度ではない。

慶太と並んで写る写真を私は直視できない。何も知らない慶太の笑顔に責められている気がする。

「慶太と結婚するのに匠と別れないんですか?」

「別れないよ」

「…………」

返す言葉を失った。慶太と結婚するけど匠とも別れないなんて虫がよすぎる。

「もう一度聞きますけど、美麗さんは何がしたいんですか?」

「慶太と結婚?」

「何で疑問系なんですか……」

「もう! 美紗ちゃんさっきから質問ばっかり! 美麗疲れてるから休みたいのに!」

結婚式が来月に迫って打ち合わせが頻繁に行われ、美麗さんは親に連れられて式場や披露宴会場を往復している。その合間に慶太とデートをして、夜は匠のライブに行ってから体を重ねている。最近は慶太よりも匠を優先しているように見える。

匠に抱かれた体で慶太と会う美麗さんを私は気持ち悪いとさえ思う。毎日そんな生活では当たり前に疲れるだろう。

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