過保護な彼にひとり占めされています。

恋になる





『俺はずっと、お前のこと女だって意識してるけど』



電車内でのその言葉と、キス。

それは同期からの、突然の。



それから一夜が明けた翌日。いつもより早い時間に出勤してきた私は、緊張の面持ちでドアの端からコソッとフロアを覗き込んだ。

日常通りの、デスクが並び、壁際にホワイトボードの置かれたそのオフィス内には、少し早めの時間ということもあり人はまばらにしかいない。



……まだ、相葉は来てない。

背の高いあの姿がないことを確認すると、「ふぅ」と息をひとつ吐き出し、フロアに踏み込んだ。



昨日あんなことがあったのだから、当然といえば当然なんだけど……顔を、合わせづらい。

だって、あ、あああ相葉が私を好きとか言って、キスするなんて。意味が分からない。



相葉が、私を?

なんで相葉が?

私のどこを?

いつからそんなことを考えていたんだろう。なんで、そんな、こんな……。



「あぁぁぁ〜……意味わかんない……!!」



デスクにトートバッグを置きながら考えれば、考えるほどに意味が分からなくなる。

せっかく整えてきた茶色い内巻きの髪を、両手でぐしゃぐしゃと乱しながら頭を抱えた私を、フロア内にいた社員たちは不思議そうな顔で見た。



でも、相葉がそんなことを想っているなんて……全く知らなかった。

なんでいきなり?酔った勢い?

はっ!ていうかもしかして、からかわれた!?



そっか、そうだ。相葉、顔だけはムダにいいし、ああやって女子をからかって楽しんでいるのかも?

いや、それはそれで最低すぎる気もするけど……。



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