俺様男子の克服方法(短)
身体から溢れ出る無駄な自信


「また別れたぁ?」
「だって、誰彼構わず優しくするから嫉妬しちゃって……」
「何回目よ、それ」
「優しい男が好きなんだけどなぁ」
「その理想捨てろ」

美音(みね)は持っていた漫画をすごい勢いでめくって、私に見せつけてきた。
「俺の女になれ」とイケメンがドヤ顔で言っている場面だ。

「たまにはこーゆーのに目を向けなさい」
「俺様? 絶っ対やだ!」
「わっかんないかなーこの魅力」
「二次元ならいいかもしれないけど、現実なんてただのわがまま男でしょ」

そもそも顔が良いだけでも、嫌みに思えるのに、そこに偉そうな態度とか+αされたらもううざったくてしょうがない。
という主張は美音に何度も伝えている。

「そーゆーのを食わず嫌いと言うのさ」
「はあ、そうですか」
「あ、そういえばお兄ちゃんの友達にリアル俺様いるから紹介しよっか?」
「結構です」

物腰柔らかな美音のお兄さんの方がばっちり好みなんですよ。
むしろお兄さん紹介してくださいって。

「まあ、そういわずに。あ、今日これから会いに行こう」
「勘弁してくれ」
「あ、お兄ちゃん? 誠人(まさと)さんと今日飲まない? ……うん、私も友達誘っていくから。それじゃあ」

私をすっかり無視して電話を始め、あっと言う間に約束をこじつけてしまった。
たまに、変なところで行動力あるんだから。
行きたくないけど、お兄さんに癒されたいから、一時間後に美音の家を出た私だった。


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