鈴木くんと彼女の不思議な関係
翼の色に意味はない

 鈴木宏大は「じゃあ明日、頑張れよ」と社交辞令のように言って電話を切った。

 私はなんとなくホッとしたと同時に、訳もなくイライラし、イライラした自分にまたイライラした。明日は舞台の本番なのだ。余計な事は考えず、さっさと食事をとって夜のスケジュールをこなそう。

 いつも通りの母の食事は、美味しいと言えば美味しいが、慣れてしまえば大きな喜びもない。食事の後は勉強をして、順番が来たらゆっくりと風呂に浸かり、少し汗を出す。代謝の良い身体と美しい肌を保つ秘訣だ。身体を温めると精神も上向くのが分かる。歯を磨いて身体を洗って、さっぱりしてベッドに入れば、あっという間に眠れるはずだ。

 鈴木が多恵に告白して、相手にされなかった。ただそれだけの事実が、胸につかえて上手く消化できない。どういう訳か、多恵に対する怒りが湧いて来る。多恵には何一つ非はないのに。
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