腹黒王子に秘密を握られました
 

「いいから、さっさと立て! 会社遅刻するぞ!」

フローリングに爪をたて必死に抵抗する私を、容赦なく引きずっていく金子。

「やだぁぁぁ! 絶対会社、行きたくないぃぃぃっ!!」

「なにふざけたこと言ってんだよ! テメェ社会人何年目だ」

「だって! きっともう会社中に私が腐女子だってばれてるもん! 恥ずかしくて行けないですっ!」

ガルルルルッとうなりながら、涙目で金子を睨む。
入社してから五年間、上品で穏やかな完璧な女のフリをしてたのに、今更腐女子だなんて、みんな気持ち悪がるに決まってる!

「俺が腐女子でも好きだって言ってんだから、他の奴の視線なんて気にしないで胸張って会社行けよ!」

「それとこれとは別ですーっ!!」

頑としてその場を動こうとしない私に、金子は大きくため息を吐き出し、引っ張っていた私のコートを離した。

「わかった」

ようやくわかってくれたのね。
可愛い恋人がこんなに嫌がってるんだもんね、無理やり会社に行けなんて血も涙もないこと言わないよね。

ほっとして顔を上げると、そこにあったのは悪魔の微笑み。

「じゃあ、実力行使だ」

「へ……っ」

にやりと笑った綺麗な口元を見て、青ざめる。

まさかまた、アイアンクローですか!?
行くって言わなきゃ頭蓋骨潰すぞとか言うんですか!?
ひぃ、DVだ!
これがうわさに聞くDV男か!!

< 223 / 255 >

この作品をシェア

pagetop