強引上司とオタク女子
4.オタク仲間ですから

給湯室では、私がマグカップとヨーグルトの上蓋を洗う音だけが響く。

バレたバレたバレた。
内緒にしてたのに、めっちゃバレた。

あああああ、これからはあの人オタクなのよって陰口を叩かれるのか。

いやでもオタクの何が悪いよ。
個人的趣味の問題で、誰にも迷惑かけてないじゃん。

それに、なんなのコスプレ喫茶って。

そんなの私も行ったこと無いよ。

でも御影石くんのコスプレ姿なら見たいかな。
三笠くんがやってくれたら最高なんだけど……って違うー!


「川野、いつまで洗ってんだ」

「はーい」


いつまでって、いつまでも洗いたいよ。
それでさっきの十分間がなくなるならば。


「もう昼休み終わるぞ。打ち合わせしたいって言っただろ、早く来い」

「は……? 打ち合わせ?」


そういえば、最初にそんなこと言ってたっけ。話しているうちにすっかり忘れていた。

濡れた手で、頬をパンパンと叩く。
お化粧が取れちゃうかなとかそういうのを気にするほど厚くも塗ってない。

考えるの辞めよう。

仕事中だもん。仕事のことだけ考えよう。

国島さんが何を言っても知らぬ存ぜぬを通そう。
菩薩の心で生きるよ。

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