気になるパラドクス

2

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月曜日。
十五時のおやつの時間。
サボるわけにはいかないけど、こっそりキャラメルを口に放り込んだら、静かに近づいてきた部下に拝まれた。

「村居さん。お願いですから、私をあのミーティングから外してください」

……今度は単独で直接来たなー。

キャラメルの甘さにほんのり幸せを感じながら、目の前の部下を眺める。

本日14時に、フロッグすてっぷの人と企画室と、うちの磯村くんが新作インテリアデザインのミーティングに入った。

うちがコラボで販売展開するらしい。

磯村くんから細々とした書類作成もあるからと頼まれて、事務員をひとり出席させる事になり、新卒だけど優秀な子を貸し出した。

その子は三十分しないうちに、磯村くんにつままれるようにされて連れてこられる。

ただ『フロッグすてっぷの人が怖い』と言うだけで、泣きだした彼女をとりあえず放置して、入社五年目のベテランの子を向かわせた……はず。

えーと。彼らがミーティングに入ってから、一時間で二人の事務員が脱落するって……どんなミーティングしているんだろう。

しみじみ考えていたら、磯村くんが部署に入ってきた。

「……申し訳ない、村居さん」

足を組み、キャラメルを飲み下して磯村くんを見上げる。

「どういうことなの?」

「最初の子はミスったからしょうがないとしても、彼女は明らかに八つ当たりされた」

私に直訴してきた彼女がプイッと顔を背け、磯村くんが少し笑顔をひきつらせる。

「八つ当たりって? ミーティングでそんな人がいるの?」

「いるんですよ、これが。デザイナーの人は少し扱いずらいって言うか、なに考えているのか理解に苦しむって言うか……何となくご機嫌とれる方法はわかっているんですけど」

ペットボトルのお茶を開けながら、視線をずらしていく磯村くんを睨む。

「なら、ご機嫌とってよ。うちの子達は八つ当たりされるいわれはないじゃないの」

「いや。相手は黒埼さんなんで、きっと村居さんが来てくれれば一発じゃないかな、とは思ってますが。まさか事務主任をミーティングに参加させるなんて、さすがに課長の許可もいるんじゃないかと」

飲みかけのお茶を吹き出しそうになった。
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