俺様当主の花嫁教育
御影さんが点てたお茶を、エリカちゃんは優雅な仕草で押し頂いた。
西郷さんも、名ばかりの御曹司じゃないところを見せようとしているのか、それなりに洗練されたお作法を見せる。


負けたくない、と気張ったせいで、私の動作はいつもよりぎこちない。
西郷さんの視線をほんのわずか感じたけれど、そこに続いたのは小さな失笑だった。
それがわかるから、私はまっすぐ顔を上げられなくなる。


私とエリカちゃんの出来の違いを思い知らされる。
沸々とこみ上げる絶対的な敗北感が、容赦なく私をどん底に貶める。


そんな中、エリカちゃんが思い切ったように御影さんに声をかけていた。


「あのっ……。私にもお点前させていただけませんか」


勇気を振り絞ったのだろう。
エリカちゃんの横顔は、ほんの少し強張っている。


「私も、幼い頃からお茶に慣れ親しんで来ました。もちろん、御影さんには及びませんけど、こんなチャンスもうないでしょうから、御影さんに、私の点てたお茶、飲んでいただきたいです」
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