キミに捧ぐ愛
2.
裏切り
それから夏休みに突入したけど、あたしと海里の関係は未だに曖昧なままで。
あの日の歩美との電話のことは話せずにいた。
あたしから切り出すことなんて出来ないし、何より連絡がないんだから確かめようもない。
あの日、2人は確かに一緒にいた。
それはわかってるけど、歩美はあたしと電話したことを海里に言ったのかな。
いや、言えるわけ……ないか。
もしあたしが歩美の立場だったら、そんな醜いことをした最低な自分をさらけ出したくない。
嫌われたくないって思っちゃうはず。
海里は多分、何も知らない。
歩美も……海里の前でどんな気持ちでいるの?
今も会ってるのかな。
ーーコンコン
「結愛ちゃん?いるの?」
ドアの向こうから聞こえた遠慮がちな声。
ベッドにうつ伏せになっていたあたしは、一瞬だけ体をビクッと震わせた。
「なに?」
ドアを開けることなくそのまま返事をする。
顔を見たくないわけじゃない。
ただ顔を見て話すのが面倒なだけ。
「今夜、お父さんが外食しようかって言ってるんだけどね」
「あたしは行かないよ」
「そ、そう?でも、お父さん来週からまた出張に行っちゃうし、家族でゆっくり食べられるのは今日くらいしかないからみんなでって」
「行かないってば。あたし、今日は出かけるから」
イライラして少し大きめの声が出た。