まだお父さんの会社の、社宅にいた頃の話だ。

うちの隣には、東京から転勤してきたばかりの家族が住んでいた。



子供は中学生のお兄ちゃんと小学校五年の弟の二人兄弟。

お母さん同士が仲良くなったふたつの家族は、お父さんたちが遅くなるような時には、一緒に晩御飯を食べたり、ちょっとした旅行に行くようになった。

男の子ばかりの家で女の子が珍しかったせいなのか、まだ、小学校二年生だった私は、上の慎之介兄ちゃんにも、下の源之助兄ちゃんにもとても可愛がってもらった。



隣の立原家がまた東京に戻ってしまうまでその関係は続き、私が東京の大学に受かって一人暮らしをしだしてからは、月に一度は立原家に夕食に招かれる生活が続いている。


あれは多分、源兄ちゃんたちがやってきて、初めて迎えた夏休みのことだった。


いつものように届いた、田舎のおばあちゃんからの美味しそうな野菜。

おすそわけに隣に持っていくように言われた私は、玉ねぎやじゃがいもでいっぱいの紙袋を両手に抱えて、チャイムを鳴らす。

そうしたら――いつものように開けられたドアから、見知らぬ男の子が現れたのだ。


その時の衝撃は今でもはっきり覚えている。

両手いっぱいに抱えていた野菜でいっぱいの袋を、おもわず落としてしまったくらいだもの。



「ごめーん、ターくん、だれー?」



後ろの方でおばさんの叫ぶ声がする。