繋ぐ〜命のバトン〜
プロローグ
私は生まれつき、心臓に病気を持って生まれてきた。

生まれたときからずっと真っ白な天井に消毒液の臭いが染み渡った 色のない世界に住んでいた。

両親はいつも見えないところで泣いていた。それに私は気づいていた。お父さんの偽りの笑顔に、お母さんの泣きはらしたあとの真っ赤な目。気づかない方がおかしいくらいに、それは不自然なものだった。

(こんなに悲しませて、私って親不孝ものだ。)

小さいながらに私はそう思っていた。早く治したい。だけどそれができないからこうなってるんだよね...。

両親の弱々しい姿を目にする度に、とても申し訳なく思う。ごめんなさいって何度でも言いたい。けど言ってはいけない。お母さんとお父さんが余計泣いちゃう。だから心の中で呟く。


(ごめんなさい。)


「優香?どうしたの、ボーッとして〜。」

そういうお母さんは、擦って赤くなった目を時折痛そうにさすっている。
あぁ、また泣いたんだ。私のせいで。

「ううん!何でもない!」

だから、私は無理矢理でも笑って答える。そうしたらお母さんも笑ってくれるんだ。泣きそうになりながらだけど、それでも笑顔のお母さんを見れることが嬉しかった。




そんなある日のこと。

いつも通り退屈な日を過ごしていた私に、希望の光が差し込んだ。お世話になっているお医者さんから、アメリカでの心臓移植をすすめられたのだ。ドナーが見つかったから、今すぐにでも行きましょうとか。

異国の地で手術をするなんて体が震えるのがわかった。でも、手術をしたらお父さんとお母さんが笑ってくれる。そう思うと答えは一つしかなかった。


「先生。私、アメリカに行きます。行って、病気を治してきます。」



こうして私はアメリカへと飛びだった。







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