強引な次期社長に独り占めされてます!
8:終わりと始まり
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月曜日。今年最後の出社日。
事務所は仕事納めと言いつつ、勤務時間も短く大掃除で業務は終わる。

それをいい事に主任とは朝に当たり障りない挨拶だけをして、それからぴったりと芳賀さんに付き従いながら一日を無事終えた。

帰り際に『今年もお世話になりました。来年もよいお年を』とお決まりの挨拶をしてから、年末年始の連休に突入。

……の、はずだったんだけどなぁ。

三十一日。大晦日の夜二十ニ時。

どうして主任から連絡が来るのでしょうか?

何か約束したかな?

たぶんしていないと思うけど、何せ記憶が曖昧だから何とも言えないんだな。

お酒の力って怖い。つくづく今年は禁酒ということで自重します、自重。

だからどうか許してください。

鳴り続けるスマホを正座して拝んでいたら、ピタリと鳴りやむ。

諦めた……わけがないよねー。

また鳴りだしたスマホをテーブルから取り上げ、深い深ぁい溜め息をついた。

「……もしもし」

『そんな世の中終わった、みたいな暗い声で出ないでくれないか?』

唐突に苦笑混じりの声が聞こえてきて、テーブルにうつ伏せる。

「そもそも私は明るい性格してませんから。言いたいことがそれだけなら切りたいと思います……」

もう、本当にどうとでもなれだ。

通話の向こうで小さく吹き出す声が聞こえて、続いて咳払いも聞こえた。

『そんなわけないだろう。今からマンションの下に来い。神社に行くぞ神社に』

大晦日を神社で過ごすつもりですか?
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