冴えない彼は私の許婚
婚約パーティ?
翌朝、早くから目が覚めた私は散歩でもして来ようと出かけた。
1時間ほど歩いて帰ってくると、玄関前に知らない車が停まっていた。
車の中では朱音が男の人とキスをしていた。

「朱音!?」

朱音は私に気付いて車から降りると「送ってくれてありがとう」と言ってドアを閉めると車は去っていった。

「朱音、今の人とお付き合いしてるの?」

相手の人は軽そうな人だったけど…

「付き合って無いわ昨夜クラブで知り合って電車がなくなったから泊めて貰っただけよ」

「昨夜あれから行ったの?知らない人の家に泊まるなんて…」

「私一人じゃないわよ同じ大学の美登里も一緒だったから心配しないで」と言って玄関を入って行く。

私も玄関を入るとちょうどお祖母様が出掛ける処だった。

「二人共何処へ行っていたのですか?」

「早くから目が覚めたのでお姉様と散歩して来たのよ。あー気持ちよかった。お姉様また一緒に散歩しましょうね?」と言って朱音は部屋に入って行った。

朱音ったら…

「お祖母様こんなに早くからお出かけですか?」

「ええ、イギリスでお世話になった方のご主人が亡くなったらしくて、今から行ってきます。2週間ほど留守にしますからね?朱音に羽を伸ばし過ぎないように言っておくように」

「はい…」

朱音の事お祖母様にはバレてるみたい。
さすが魔女何でもお見通しなのね?
朝食を済ませると部屋のクローゼットを開ける。

「何着て行こうかしら?」

鏡の前でいくつも洋服を当ててみては「うーん違う!」と1時間ほど迷って黒いドルマンスリーブのワンピースにした。
約束の時間になり玄関を出ると恭之助さんが車にもたれて電話をしていた。
立っているだけでも絵になるな…
見惚れていると恭之助さんと目があった。

「なに?俺に見惚れてるの?」

「違います!電話していたから終わるのを待っていたんです!」

見惚れていたなんて絶対に言わない!

「まぁいいや、とにかく乗って」と恭之助さんは助手席のドアを開けてくれた。

「どこ行くんですか?」

「内緒!」

恭之助さんは微笑んで車を走らせた。
暫くして車は高速へと入った。
私は運転する恭之助さんを横目で見る。

「そんなに俺を見ていたいの?」

「ち、違います。何処に行くか聞きたくて…」

「もうすぐ着くよ?」

いつの間にか高速を下りていた。
ここは箱根?
車が止まる。

「ちょっと早いけど食事にしようか?」

高台にある小さなレストラン…
私達はテラス席に案内される。
テラス席からは芦ノ湖が見渡せ景色は最高。

「ここのオムライスが美味しいだ、オムライスで良い?」

「あ、はい…」

オムライスは子供の頃から好きだけど…
箱根までオムライスを食べに来たの?…
年配の女性がサラダを運んで来てくれた。

「恭之助さんお久しぶりですね?」とその女性が微笑む。

「ご無沙汰してます。覚えていてくれたんですね?嬉しいです」

「もしかしてこちらは…あの…」

彼女が何かを言おうとした時恭之助さんは人差し指を顔の前で立てる。
彼女は微笑んで「ごゆっくり」と言って戻って行った。

「……」なんだろう?

暫くしてオムライスが運ばれて来た。

「食べよう」と恭之助さんは言うと食べ始める。
私もスプーンで1口食べる……

「おい…しい」

なんだか懐かしい味がする。
何故だろう?
私、このオムライス食べた事ある…
ここ数年箱根には来ていないのに?
どこで食べたんだろう?…

「この味知ってるどうして?」

恭之助さんはにっこり笑って「その答えはもう少し後からね」と言う。

食事を済ませ再び車乗り走り出すと着いた所は大きなお屋敷。

「ここは?」

「じぃ様の別荘、そのうち俺達の物になるけど!」

さすが葉瀬流の家元立派なお屋敷だわ。
恭之助さんに手を引かれ中庭に入って来た。
中庭にはとっても大きな木がありブランコがぶら下がってる。
私は木の下まで行く。
まるで何かに誘われるがままに
「ここは…」

ここは小さい頃お祖母様に連れて来て貰った事がある。
思い出した…
私ここで恭之助さんと会ってる。
このブランコに乗って私より少し大きな男の子に背中を押してもらった。
私はその男の子が大好きで…
『碧海、恭之助お兄ちゃんのお嫁さんになる』って言った。
私は振り返ると恭之助さんは優しい眼差しで見つめてくれている。

「恭之助お兄ちゃん…」

恭之助さんは私の元へ来ると抱きしめて「やっと思い出したか?」と言う。

「うん…思い出した」




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