『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「迎えに来ないならタクシーでそっちへ送り込むわよ!いいの⁉︎ 」

「えっ⁉︎ ちょっと待てよ!何でそうなるんだよ⁉︎ …はっ⁉︎ 順番⁉︎ 何だよ、それ…!」


反論しながら寝室のドアを開けると、視界に彼女の姿が飛び込んできた。
(不味い…!)と咄嗟に構え、極めて冷静に、紳士的に…と思いながら声を発した。


「…とにかく今からそっち行く。話は会ってからにしよう。今、こっちもいろいろ立て込んでて、急には困………っ!」


ブチッ!といきなり切られた電話にムカついた。
舌打ちしたくなるのを我慢して、ベッドへ放り投げてから彼女に近付いた。


怯える様な眼差しでこっちを見ている彼女は、まだ俺のことを警戒してる様にも思えた。
起き抜けから野獣化するんじゃなかったな…と反省し、笑みを浮かべて言った。


「朝ご飯一緒に食べたかったけど、どうもそんな時間無くなった。急ぎの用事が出来たからすぐに出るよ。そのまま仕事へ行く。愛理さんはこれで適当に食べといて」


財布の中からカードを取り出して渡した。
ゴールドカードを初めて手にする様な彼女は、頬を引きつらせて驚いていた。


…いろいろと説明してる暇はなかった。
早く行かないと、本当に祖母を家へ送り込んできそうな雰囲気が結華にはあった。

それだけは避けようと、取り敢えずその場をごまかして姉の住むマンションへと向かった。



そこで会った懐かしい祖母は、俺が覚えてる数年前とは全く別人のような風貌をしていたーーー。




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