バーが営業を終えたのは2時過ぎ。

マスターと順平が片付けを終えたのは2時半前だった。

マスターと順平と一緒に事務所に入った私は、オバケはいつどこに現れるのかとビクビクしながら部屋中を見回していた。

今はマスターと順平がいるから怖さも少し和らいでいるけど、売り上げの集計なんかを終えると二人とも帰ってしまう。

ヤバイ…絶対無理だ…。

「よーし、今日も終わったな。お疲れさん。」

えぇっ、もう?!

「今日はいつもより忙しかったからな。もうこんな時間だ。帰って寝るか。」

待って、待って!

まだ帰らないでー!!

「じゃあ朱里ちゃん、俺たちは帰るからね。店の鍵はちゃんと閉めておくから、朱里ちゃんは安心して寝ていいよ。」

安心して眠れないから!!


どんなに目で訴えかけても、マスターは気付いてくれない。

「じゃあね、朱里ちゃん。おやすみー。」

マスターはさっさと事務所を出た。

恐怖と不安で背中に冷たい物を感じる。

私はきっと今、ひどく蒼ざめた顔をしているに違いない。

その後をついて出ようとした順平が、腕時計をチラッと見ながら、ボソリと呟く。

「2時半か…。草木も眠る丑三つ時だな。」

順平の一言が私に追い討ちをかけた。

う、丑三つ時…!!

オバケのゴールデンタイム…!!

無ー理ー!!

絶対無理、耐えられん!!



私は無意識のうちに、震える手で順平の背中にがっしりとしがみついていた。