甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
甘い言葉のひとつでもあれば

素直になる忘年会


「あれ? 加賀くん?」

数日後の午後、会社の屋上に行くと、手すりにもたれ遠くを眺めている加賀くんの姿を見つけた。呼びかけると振り返り

「あ、小千谷さん、お疲れ様です」
「珍しい。どうしたの?」
「小千谷さんこそ」
「私はちょっと息抜きに」
「寒いのによくこんなとこ来ますね」
「加賀くんも寒いのによくいるね」
「確かに」と苦笑いをした。
私は、手前のベンチに腰を掛けた。今日は、風は冷たくて、雪の予報が出ていたことを思い出した。

「今日、忘年会だね」
「そうっすね」と言うと、加賀くんは深い溜め息を吐いた。さすがに無視できなくて突っ込まざるをえない。
「すっごい溜め息」
「あー、すみません」
加賀くんは逡巡してから
「小千谷さん」
「うん?」
「ああ、いや」
口ごもる。
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