嘘から始まる恋だった

頬にあたる温もりに目が覚めて、薄っすらと目を開けると男に腕枕をされて抱きしめられたままでいる。

おでこにかかる寝息にドキドキしだし、身動きをとろうと腰に乗っている高貴の腕を退けようとしてみるけど…意外と重くて起こさないようにそっと持ち上げるのに、すぐに重みが増し落ちてしまう。

それならと、目の前にある男の胸を倒して横向きにさせれば解放されるかもと押してみるのにビクともしない。

おかしいな?

寝ている人って力が抜けているはずなのに…

クスクスと笑いをこらえる声が頭上から聞こえる。

まさか…

そっと、男の顔を盗み見ると目がバッチリ合ってしまった。

「…起きて‥たんだ‥」

「あぁ…麗奈より先に目が覚めてた」

「うそ…寝息を立ててたのに…」

抗議するつもりで顔をあげると、意外と顔が近くてドキンとしてしまう。

「麗奈の反応を狸寝入りして見てたけど…」

もうと高貴の肩を叩いた。

抱きしめられていた腕に力が入り、グッと引き寄せられて男と更に密着してしまう。

このドキドキが伝わりませんように…

男の顔が近づき優しく唇を塞いでいく。

目を閉じて、男の肩にある手をそのまま男の後頭部に回すと、ふわっと横向きの体が上を向いて目を開ける。

キスしたまま目が合い、恥ずかしくて視線が彷徨うと唇の上で話し出す男。

「そのまま…開けてて……麗奈にキスしているのは誰?」

「…こうき」

「そう…俺だ。こうして抱きしめているのも俺」

上唇を啄み、下唇を啄み…角度を変えて何度も唇を堪能する男の手が、いつの間にか肩を撫で腕を伝って指を絡めてきて、のしかかる重みに体が硬直してしまう。

異変に気がついた男は上体を起こし、頬を撫でる。

「どうしたんだ?なぜ、泣いている?」

どうやら記憶が重なり無意識に涙を流していたらしい。

あの時の恐怖が忘れられない。

「…ごめんなさい。お願いだから上に乗らないで…」

怪訝な表情で体を離し、私の上体も起こしてくれた高貴は私の肩を優しく抱きしめて男の肩に寄りかかるように引き寄せてきた。

何も聞かずにそのまましばらく抱きしめてくれる高貴。

「……ありがとう」

「何が?」

わかっているくせに…

「高貴にこうして抱きしめられているとホッとするの」

肩にある男の手の指に力が入る。

「ホッとするより、ドキドキしてほしいんだけどな…」

コツンと男の肩に寄りかかる私の頭の上に男の頭が乗った。
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