俺の胸に顔をすり寄せて眠る愛しい女。

彼女がいなくなったあの日、麗奈の変化に気づけてば彼女に寂しい思いをさせる事もなく側にいてあげれたのに…

俺の寂しさなんて、彼女の辛さに比べればたいしたことはない。

怒りの矛先は祖父に…

汚いやり方で麗奈を追い詰め、俺たちの仲を引き裂くなんて…許せない。

会社の為と俺を次期社長にしたいからと俺の意志を無視して婚約者まで用意するしたたかさ。

この世で愛しい女を捨ててまで、この会社のトップになって何になるんだ。

未練なんてない。

俺は自ら会社を立ち上げる事にした。

その為には、協力者がいる。

彼女がいなくなって直ぐに常盤専務に相談する。彼ならば俺の意志を理解して協力してくれるだろうと確信して…

朝一で専務にアポを取り時間を作ってもらった。

「専務、俺は麗奈を手放してまでこの会社のトップに立ちたいと思いません。自ら会社立ち上げる事にしました。ですが、祖父の目を欺きながら会社を立ち上げる事は難しいと思っています。そこで専務にご相談ですが俺の代わりに会社を立ち上げて欲しいのです」

「……面白い事を言うね。僕がこの会社を辞めてなんのメリットがあるんだい?」

「専務も薄々わかっているはずでは⁈麗奈が姿をくらませた本来の原因がなんなのか。あなた達親子を守る為に麗奈は……」

決意した彼女の辛さを思うと言葉が出てこない。

「……そこまでして会長は君を社長にしたいんだよ。麗奈ちゃんだって君の将来を考えて……」

「彼女がいない未来なんていりません。俺は彼女を取り戻す為にどんなことだってするつもりなんです。あなたが協力してくれないのならそれまでの関係です」

「……どんなことでもかい?」

「はい」

数秒、数分だったかわからないがお互い視線を合わせ腹の探り合いだった。

「……大和を敵に回す覚悟があるんだね」

「えぇ、既に覚悟を決めて飛鳥建設の傘下に入る手はずは整ってます」

一瞬だけ目を見開き、あはははと豪快に笑う専務。

「いいよ。この歳で冒険するのもいいかもしれない。吉と出るか凶と出るかやってみようじゃないか」

「ありがとうございます」

深々と専務に頭を下げ俺は彼の男気に感謝していた。

それからしばらくして専務は息子と一緒に辞表を出し大和建設を後にした。

俺たちが手を組んでいるともしらずに、会長は俺を常盤専務の後釜に座らせた。