すきだから
「さあ、入って。少し散らかっているかもしれないけど」

そう言いながら、家の扉を開け部屋へと招き入れる。
千歳の住むマンションは本当に駅から近い所だった。
周りには商店街もあって利便性は最高だ。

家の中はファミリータイプのマンションなだけあって、部屋も広い。
散らかっているなんて言ってたけど、そんな事はなくて綺麗に整頓されていた。


「ちょっと前まで家族で住んでいたんだけどね。親父が転勤になっちゃって、それにくっついて母さんも付いて行ったから、だから今は一人暮らし」

「・・・へえ、そうなんだ」

「適当に座って。今飲み物入れるから」

言われた通りにテーブルの前に座ると、辺りをきょろきょろと見回す。

サイドボードには家族3人で撮った写真。
その写真で千歳は一人っ子であるという事が分かった。

「お待たせ。・・・どうした?」

「千歳って一人っ子なんだね。知らなかった」

「そうだよ。あ、俺の事ひとつ知る事が出来たね。そうそう、そうやって俺の事知っていって。・・・さて、時間が勿体ないから始めようか」

そう言って、千歳は教科書を広げる。

私も慌ててカバンから教科書を出して、勉強に集中する事にした。
< 42 / 87 >

この作品をシェア

pagetop