我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
縮まる距離
卒業も間近に迫り、教室の雰囲気はどこか落ち着きがないように見える。

授業が終わる度に会話で賑わい、喜びと寂しさの感情が入り混じっている。


「ふう」


そんななか窓際に移動し、一人そこからの景色を眺めた。

この時期、思い出作りに追われる高校三年生が多いのだろうが、そういう気分にはなれない・・・


「おいおい、なに感傷的になってんだよ」


笑顔で八坂雅(やつさかみやび)が近づき、傍にある机の上に座った。

それに続くように、石動光太郎(いするぎこうたろう)が椅子に座り、いつもの三人になった。


「まあ、気持ちは分からなくもないけどね。お前の高校生活は、二年の夏休み前に終わったようなもんだからな」


「勝手に人の高校生活を終わらせんな・・・それに、そんなんじゃねえよ」


とは言いつつも、半分近くは当たっていた。


「二年の夏休み前・・・ああ、桜沢さんか」


全く悪気が感じられない表情で、コウはさらりと言った。



桜沢紗希(さくらざわさき)は、一昨日の夏まではうちの高校の野球部のマネージャーだった・・・


「桜沢さんと仲良かったもんな」


「いやいや、仲が良かったってもんじゃないでしょ」


コウとは対照的に、雅が不敵な笑みを浮かべてこちらを見る。

きっと、何を言っても無駄だ。

口で雅に敵うわけがないと諦め、ため息をつきて窓の外を眺める。
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