without you
10
久遠社長の片眉が、「ほぅ?」という感じで上がった。

「おまえ、借金があるのか」
「いえっ。借金はありません。でも生活するために、お金を稼ぐ必要はあります」
「まー、そうだな。それでおまえはうちに応募をした、と」

久遠社長は、右手に持っていた紙を机に置くと、向かいに座っている私の方をじっと見た。
おかげで、私の少しだけ緊張がぶり返す。
でも社長は今、私の話を聞く体勢に入ったと思う。

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