雪降る夜に教えてよ。

六花

*****



次の日。案の定今日も大雪で、ほとんどの交通機関は麻痺状態なのだそうなニュースを見ていた。

昨日よりも早く行こう。

決心して、身支度にとりかかる。

予想通り、昨日よりも人が多い地下鉄に乗りながらも、眠さにあくびを噛み締めた。

コーヒー飲んでないもんなぁ。仕方がないけど、缶コーヒーだな。

地下鉄を降りるとすぐに自販機のホットを押して、出てきた缶コーヒーをお行儀悪く飲みながら、雪の中を強行軍に乗り出す。

ブーツだけど、こっちでこれだけ積もるのも珍しいんじゃないかな?

それぐらいな高さの積もり具合で、それをかきわけ、たまに溝に埋まりながら歩いていたら、クラクションの音に道路を振り返る。

黒くて大きな車が停車して、助手席側のウィンドウが開いた。

「秋元さん! 乗って」

桐生さん。

“乗らないか?”や“乗せていってあげる”でもない『乗って』と当然の様に言う。

「結構です」

一言呟いて歩きだすと背後でドアの開けて閉まる音、それから急に地面の感覚がなくなって、視界が高く切り替わった。

「は? え、きゃあ!」

桐生さんは私の腰に手を回し、またまた片手で持ち上げていた。

「君はほんと小さいな。会社に着く頃には雪だるまになってるぞ」

いや、そういう問題でなくてですね!

「セ、セクハラ!」

「はい、はい、お嬢さんはお兄ちゃんの言うこと聞こうね?」

こ、子供扱いですか!

暴れるのも何なので、大人しくしていたら助手席に押し込められた。

気をつけないと私、簡単に誘拐されそう。

「電車は完全運休、バスも限られた路線しか走ってないらしいよ」

桐生さんは運転席に戻るとシートベルトを着け、そう言って車を出す。

「だから、君は土橋さんたちを気にすることはない」

いや。多少面倒なだけでたいして気にしていません。とも言えず、とりあえず無言。

「相変わらず無口だねー」

共通の話題なんてないでしょうに。

「秋元さんて、なんでいつも無表情で無言なの?」
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