めぐり逢えたのに
忍びよる不安
それから暫くの間、私はとても幸福だと思っていた。
いつでも彼の声が聞けたし、会いたい時はいつでも彼はやってきてくれたし、毎朝、私の髪の毛をかきあげることも彼は忘れなかった。

それに、彼とベッドにいると、もう何もかも忘れてしまって、身も心もとろけるような至福の一時を過ごす事ができたから、私は、彼と別れるなんてとても考えられなかった。


だけど……、私は少しずつ苦しくなっていた。

私は彼の事をみんなに紹介したり、二人で外に遊びに行ったりしたかった。
やっぱり不倫は不倫で、公の場所でおおっぴらに会えないのはとてもつらい。

特に私の場合、スキャンダルになるのは必至なので、ひた隠しに隠すしかなかった。どこから漏れるかわからない、と思うと、友美にさえ警戒していた。(友美にはもう話してあるけれど)



私の恋は一体どうなってしまうんだろう。



時折、ふっと不安がよぎるけれども、私は先のことはあまり考えないようにしていた。考えたところで、どうにもならないと思っていたからだ。



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