めぐり逢えたのに
最高の思い出、そして別れ
あれは本当に素敵な夜だった。


私は、いつものように彼の部屋で彼の帰りを待っていた。
私はその頃、6時半には彼の家を出るようにしていたから、6時すぎても帰って来ない彼をじりじりとした思いで待っていた。遅くとも5時には帰ってくるっていってたのに、何があったんだろう、って少し心配になってもいた。

ケータイに電話をかけても全くつながらないし、諦めて帰り支度を始めた。こういう時にお互いにメモを残しておく習慣は今でも残っており、私はメモを書いた。 

 お帰りなさい
 時間になったので、今日は帰るね
 ケータイにもつながらないし、心配なので帰って来たら連絡ください
 明日も来るね
 おやすみなさい


こう書いて、部屋を出ようとした時、彼が入って来た。
私は、彼の顔をみれてすごくホッとしたのだけれど、時間が気になっていたので、手短に彼に挨拶をした。彼も、いつもだったら、素敵な笑顔をみせて、じゃね、って気軽に送り出してくれるのに、その日は出て行こうとする私の腕をぎゅっと掴んで私を引き留めた。
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