彼女のことは俺が守る【完全版】
第三章

自分の中の変化

 海斗さんが帰って来ることが出来ないというメールを見て、ガッカリする私がいる。海斗さんの仕事が順調なのは嬉しい。仕事が順調なのが嬉しいと思うのに、こんなにも心の奥に薄らとモヤモヤするのは何でだろう。


 自分の気持ちに素直になると海斗さんに会いたいと思っていたということに驚く。メールや電話だけの遣り取りなのに、私を気遣う優しさに始めて会った時よりも身近に感じるようになっていた。


 寂しいと感じるのはいつの間に私が依存していたということ。一番辛い時に出会ったとはいえ、こんなにも自分が海斗さんに依存しているとは思わなかった。偽装婚約者の相手に好意を持ってしまうっていうのに驚く。


『お仕事お疲れ様です。脚本が変わってロケが長引くとのこと。仕事頑張ってください。応援しています』


 何度も打ち直したメールだった。


 自分の中で感じた寂しさを文章にしないように、会えなくなって残念に思う自分の気持ちを海斗さんに悟られたくなくてメールを打つ。仕事に集中して欲しいから、私は迷惑になるようなことは言えない。でも、やっぱり会いたかった。


『海斗さんの帰りを待っていたのに』


 私はそんなことを言っていい立場ではないと分かっているのに、会えると思っていたのが会えなくなって寂しい。この気持ちの持っていきようがなくて自分の中でまた迷う。私はいったいどうしたのだろう。


 優斗に振られたから、心が壊れたから海斗さんの優しさに依存しているの?

 
 それとも私は海斗さんに好意以上のものを抱きだしている?

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