私は今の自分を支えることだけしか出来なかった。ただの失恋ならこんなにも傷つかないし、こんなにも苦しまなかったと思う。自分が三年も付き合っていた人が自分の高校からの友達と結婚する。それも妊娠していて一方的に別れを告げられた。


「よろしくお願いします」


 ここに住むのはそんなに長い時間ではないと思う。私はもう恋愛なんか出来ないと思うから、篠崎海の周辺が落ち着く頃には私はここを出て行くことになるだろう。でも、今は先の事より自分が居てもいいという場所があるだけ有難かった。


「こちらこそ。一緒に住むのだから気楽に行こう」


 篠崎海の差し出した手に私は自分の手を重ねたのだった。大きく繊細な手は指が長くしなやかでとっても温かかった。ゆっくりと手を放した篠崎海はまたニッコリと笑う。


「明日の夜は空いているか?明日の夜なら俺も少しは時間が取れるので一緒に買い物に行ける」


 篠崎海は私をリビングのソファに座らせながら、さっきまでいた何もない部屋を見つめている。多分、私の為に時間を割いて家具等を買いに行こうと思ってくれているのだろう。でも、私はこうやってあのマンションから連れ出してくれただけで十分だったし、ゲストルームが借りられるならそれがよかった。


「ありがとうございます。でも、本当にゲストルームをお借り出来たらそれでいいので」


「あのさ…」