雪国ラプソディー

この黒いケースの中には、パソコンの画面をスクリーン等に映すための〝プロジェクター〟が入っている。
なんでも、先週地方営業所から出張してきた社員が忘れてそのまま戻ってしまったとか。

普通なら、その営業所へ宅配便で送ってハイ終了のはず。こんな風にわざわざ届けに行くことなんて、まず無い。


よほど緊急事態だったんだろうな。
私は膝の上に置いたケースを見つめた。


課長の話だと、大事な取引先が来所することになってしまい、どうしても今日の夕方までに必要になってしまったとか。

営業所側でも近くの電器店に片っ端から行って探したそうだけど、型落ちとかで同じものは置いていなかったらしい。かと言って、今売っているものと今日使用するパソコンとの相性は不明で結局購入できず。


そうだよね、機械は相性が大事。同じメーカーでも世代が違うだけで動かない、なんてことはよくある。


その営業所の所長は困りに困って、最終的にうちの課長に連絡してきたらしい。昔のよしみとやらで。



だ・か・ら!
何度も言いますが、秘書課なんですけどウチ。

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