雪国ラプソディー

再会の日



その日は、いつもより早く目が覚めた。
昨晩は緊張のせいかなかなか眠れなかったため、目の下のクマがひどい。


「お願い、隠れてっ」


いつもよりたっぷりコンシーラーを塗りたくる私は、自分でもわかるほど浮かれている。


「服まで新調しちゃって、私ってホント単純だなあ……」


袖を通したクリーム色のブラウスと、淡い千鳥格子柄の少しだけマーメイドラインになっているスカートは、先日ひと目惚れして買ったもの。
決して気付いて欲しいとか、ほめて欲しいとかそういう気持ちではないものの、好きな人の前ではちゃんとしていたいという欲が出てしまう。


ーー私って、恋をするとこんな感じになるんだったっけ。


「あっ! そろそろ出ないと」


いつもより長めに準備をしてしまっていたらしい。私は通勤バッグをつかむと、慌てて玄関へ向かった。玄関先に置いてある、黒い紙袋が目に入る。


「そうそう、これも持っていかなきゃ」


私はそのまま、久し振り過ぎて忘れかけていた感情と、紙袋と一緒に出社した。

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