恋の後味はとびきり甘く
6. なかったことにして
 約束の月曜日。閉店作業の終わった八時半に店のガラス扉がノックされた。中からドアを開けて、腰の辺りまで下ろしていたシャッターを上げたら、外に涼介くんが立っていた。

「こんばんは、遅くなりました」
「ううん、私も今片付けが終わったところです」

 涼介くんを中に通してパーティションの奥のテーブルに案内した。ガスコンロで湯を沸かしながら、彼に話しかける。

「今日はどんなことを勉強したんですか?」
「午前中は製菓理論を学んで、午後はずっと実習でした」

 ティーポットを温めてから、茶葉を入れ熱湯を注ぐ。それをテーブルに置いてティーコージーを被せてから、彼の前の席に座った。

「これが実習で作ったトリュフです」

 彼が紙袋から小さな箱を取り出した。彼が四角いそのフタを開け、丸いトリュフが顔を出した。見た目は市販されていてもおかしくないくらい整っていて、白と黒の二色ある。

「黒い方はダークチョコレートのガナッシュを同じくダークチョコレートで包んで、表面をダークチョコレートのフレークで飾りました。白い方はミルクチョコレートムースをミルクチョコレートで包んで、ホワイトチョコレートのフレークを飾ったんです」
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