恋するサクラ
5年前




 私は全力疾走していた。

 突然壊れた鳴らない目覚ましを掴んでとび起き、服を着がえながら歯を磨き、化粧もそこそこに、そこらにあったパンをくわえて飛び出した。

 まってそのバス!それに乗らなくちゃ会社遅刻なのよ!

 新しいイラストを採用してもらえるかどうかの、大事な会議があるのに!

 バスを追いかけ、次のバス停に。

 近道しようと曲がり角を曲がったそのとたん、何かにぶつかり、しりもちついて、口からパンが飛び出した。

 ひっくり返っている私に、手を差し伸べて

「ごめんなさい、大丈夫ですか?」

「はい……」

 そう言って、その手を取った瞬間―
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