らしくないけど
選んだワンピース


ガサガサと音がする袋。

手に持ったその中には酒の瓶が何本か入っていて、それを貰った時一番に浮かんだのは高野の顔だったから、今あいつの家に向かってる最中で。

休みの日に押しかけるのは今日が初めてだから、今日初めて連絡先聞いとけば良かったって思った。

…まあ、いなかったらいなかったでいいけど。

いなかったときのこと考えて車で来ればよかったか、なんて一瞬考えたものの、あいつがいたら絶対飲むことになるし帰りは歩きだ。

免許は去年とったばかりだし、さすがに飲んでも運転できるような技術は持ち合わせてない。その前に捕まんのも嫌だし。


「303…」

マンションの前について、オートロックの玄関でインターホンを鳴らせば、数秒後に声が聞こえてきて。

「あれ、加地くん?」

「おー、開けろ」

「何で?今日約束してたっけ?」

「いいから、早く」

向こうからは俺の顔が見えてて、約束をしてもいないのに来たことに驚いてる。

こういう時に困るんだな。

今から行っていいかという連絡も出来ないのは確かに不便。


—ピンポーン…

玄関の前についてインターホンを鳴らすと、すぐに勢いよく玄関が開く。

< 24 / 143 >

この作品をシェア

pagetop