花京院家の愛玩人形


最寄りの駅前に、その男は現れた。


「スンマセン、ちょっとお時間」


「急いでますので」


私は素っ気なく男の言葉を遮り、足も止めずに歩き続けた。

追ってくる様子はない。
宗教の勧誘や、募金要請の類だろう。


最寄りの駅前にあるクリーニング店の看板の陰に、『アレ』は現れた。

追ってくる気配はない。
が、おそらく見つかった。

『アレ』の目的はわかっている。


度々立ち寄るスーパーマーケットに、また男は現れた。


「スンマセン、ちょっとお時間いいデスカ?
いつもお宅の二階の」


「急いでますので」


私は素っ気なく男の言葉を遮り、足も止めずに歩き続けた。

追ってくる様子はない。

だが…

お宅?お宅って言った?

なんでウチを知ってンの?

自宅の住所をリサーチした挙げ句の宗教勧誘や募金要請なんて、聞いたコトないよ?

男の目的がわからなくなった。


度々立ち寄るスーパーマーケット前にある電柱の陰に、また『アレ』は現れた。

追ってくる気配はない。
が、確実に迫ってきている。

『アレ』の目的はわかっている。

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