リーダー・ウォーク
運命の出会い

かねてから思い描いていた夢を諦めきれず、心配する声も説き伏せ
田舎から都会へ出てきてはや2年。
最初は近所のコンビニへ行くのも怖くて大変だったけれど。
慣れないひとり暮らしも住めば都でなんとかなるもので。

「吉野さん、ご予約のお客様がいらしてます」
「はい」

1年制の専門学校を卒業し、まだまだ出来ないことも多いけれどお仕事を始めた。
といっても上京する前は普通にOLとして働いていたけれど。
高校を卒業して専門学校へ通うのが普通の世界でこれはかなり遅いスタート。

でも、夢をかなえるのに歳は関係ない!

体力勝負の仕事だからちょっと不安もあるけれど、

吉野稟、今年で27歳。駆け出しのトリマー。

まだ夢は諦めたくない。

「松宮様。いらっしゃいませ。お待ちしてました」
「ああ、…なあ、教えてくれないか」
「はい?また何かありましたか?」
「最近、飯の食いっぷりが悪いんだ。あんなにガツガツ食べていたのに。
一昨日くらいから急に食べなくなった。もちろんすぐに医者に見せた。
だが体に異常はなく、ただの気まぐれだろうとぬかしやがった」
「……なるほど」
「あんたなら分かるだろう?見てくれないか?心配でたまらないんだ」

彼が来る時は他の予約は取らないように決められている。
別のコが来ていると怯えるかもしれないと。あと、すぐ終わるように。
毛の短いスムースだからそもそもそんな時間はかからないのだけど。

ちょこんとテーブルの上に乗せられたのは彼の最愛の相棒。

そして私の大事なお客様。

名前はチワ丸。

スムースチワワのチワ丸。

色はクリーム。

お目目がくりっとして可愛い、まだ生まれて5ヶ月の子犬である。

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