腹黒御曹司がイジワルです
御曹司の裏の顔

「部長、今月のノルマ、達成しました。まだ数件、伝票が上がるはずです」

「さすがだな、我妻(あがつま)」


私の所属する『プレッスル食品』営業部の部長に、“当然”というような顔をしてノルマ達成を報告すると、部長は感嘆の溜息をついている。

私はこれで、四ヶ月連続単月売上げのノルマをクリアした。


涼しい顔をしてはいるものの、これでも結構頑張っているつもり。
月末の売上げの締日の前は残業の嵐で、得意先を走り回っている。

もう胃薬は手放せない。


「ふぅ」


うちの会社は、ノルマが達成できないからといってすぐにクビになるわけでもなく、むしろ達成できない人も多い。

食品にもブームはあるし、消費者の動向なんてなかなか予測できない。

テレビで取り上げられて突然売れ出す食品もあれば、よくない情報が流れスーパーの棚からひっそりと姿を消す商品もある。

だから、営業力云々だけではないところもあり、毎日が戦いだった。
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