それでも僕が憶えているから



《3》


翌日。一学期の終業式。

校長先生の長い話を聞きながら、わたしは別のクラスの列にさりげなく目をやった。

人垣のむこうに見える蒼ちゃん。
その左頬が腫れていないことを、遠目にだけど確認できて安心した。

わたしがホタルと関わる道を選んだのは、蒼ちゃんを守るため。

なのに昨夜は、わたし自身が一瞬でも蒼ちゃんのことを忘れるなんて、あってはいけないことだった。

これからはもっと気をつけなくちゃ。



そんな感じで朝から脳内反省会をしていたせいだろう。

千歳の様子がおかしいことに気づいたのは、終業式を終え、帰る段階になってようやくだった。


「千歳、帰らないの?」


また2学期ねー、と言いながらクラスメイトたちが教室を出る中、席から立ち上がろうともしない千歳。
最近のトレードマークだったポニーテールも、心なしか元気なく見える。

どうしたんだろう、昨日はあんなに幸せそうに蒼ちゃんと話していたのに。

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