夫婦・・として

☆☆バカ仁


瞳子は、張りつめていたのが
切れたのか、涙がポロポロと
落ちていった。

「どっ、どうしたんだ?
    何か、あったのか?」
と、仁は瞳子の横に座り
心配そうに瞳子を見た。

「バカ‥‥仁。
どこにいたの?
話をしようと思っていたのに」
と、言うと
「あ~あ、逃げ回ってた。
瞳子から。
俺の気持ち知って
謝ろうとしたんだろ?
     それが、嫌で。」
と、言うから
「ごめん。
私、あまりにも鈍くて。
仁が、どんな気持ちで
私を支えてくれていたのかと、思うと。」
と、謝ると
「ほら。だから、嫌だったんだ。
俺は、瞳子達と居たいからいただけ。
瞳子が、俺の気持ちを考える
必要は、ないんだよ。」
と、言う仁に
「ごめん。」
「だから、謝るなって。
幸せなんだろ?佐原さんと?」
と、言われて
私は、返事ができなかった。

「どうした?
なぜ、返事をしない。」
「‥‥なんて言ったら、いいのか
わからないから。」
「それは、俺を気にしてか?
それとも、瞳子自身がわからないからか?」
「うーん?後者。」
「なぜ?佐原さんが好きなんだろ?」
「私は。」
「どういう事だ?佐原さんは、違うのか?」
「あ~、仁、落ち着いて。」
「これが、落ち着けるか?
俺が、どんな気持ちで‥‥
あっ、嫌‥‥いい。」
「ごめんね、仁。
暁斗は、私を大切にしてくれてるよ。
ただ‥‥‥‥‥‥‥」
私は、今までの経緯を仁に話した。

仁は、黙って聞いていてくれた。

「なんども、我慢した。
聞き間違えかとも思った。
そう願いもした。

ただ、今朝のは、ダメ。
我慢できなかった。

あの人の頭の中には、
奥様しか、いないんじゃないかと
そう、思ってしまうの。
怖いの!また、亜紀さんと
呼ばれそうで。」
と、涙が流れると

仁は、瞳子を抱き締めて
「そんな、そんな思いをさせるために
俺は、身をひいたんじゃないんだぞ。
ばか、瞳子。」
と、言った。

瞳子は、「ごめんね。」と
言いながら仁に体を預けた。
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