夫婦・・として

☆☆佐原 暁斗


俺は、訳がわからなかった。

瞳子に対して‥‥『亜紀』‥‥と
知らなかった。

どれだけ、瞳子を傷つけて
いたんだろう。

それにまして
瞳子と初めて一緒に
過ごした日の朝に‥‥
まさか‥‥‥『亜紀』の名前をいうなんて。


本当に亜紀と瞳子を比べた事はない。
まして、亜紀には悪いが
瞳子と出会ってから
亜紀の影は薄れていた。

それほど、瞳子は魅力的で
瞳子の全てに惚れていた。

俺は、あの日
結斗に連れて帰られて考えた。

結斗からは、
「父さん。
俺は母さんより
今は、瞳子さんが大事なんだ。
頼むから、あの人を
傷つけないでくれ。
鈴華も俺も、瞳子さんに
幸せになってほしいんだ。」
と、言われた。

俺は、次の日、大学の講義が終わると
心療内科に行き
話を聞いてもらい
治療方法を教えてもらい
カウンセリングを受けた。

初めて聞いた
俺自身の声での『亜紀』の名前。
本当に意識なく言っていた。

それからは、週に2回カウンセリングに
通う日々。
亜紀の名前が、中々抜けなくて
かと思うと、瞳子の名前を言ったり

治らなくて、挫折しそうに
何度もなった。

妻の名前を言ったら
いけないのか
と、自暴自棄にもなった。

酒におぼれた事もあった。

そんな時は、大学病院に行き
瞳子の姿を隠れてみて
自分自身を奮い立たせた。

そんな、俺の治療も二年かかった。
< 42 / 53 >

この作品をシェア

pagetop