それを愛だというのなら


「けど、病気を克服して、一生懸命生きている瑞穂を好きになったんだ。これからも、ずっと笑っていてほしい。俺も、努力するから」


もうやめて。


「なあ、俺のこと好き?」


お願いだから、もうやめて。

嫌いだって言ってくれた方がいい。

そうだ。私の方から好きじゃないって言えばいい。

やっぱり、友達でいようって、言えばいい。

そうすれば、私が死んだとき、健斗は『ざまあみろ』って思えるかな?

そう思うのに、口は全然違うことを口走ってしまう。


「好き。大好き……」


涙が、あとからあとから溢れて落ちる。


「ありがとう。瑞穂のおかげで、俺は幸せだよ。だって、死体同然だった俺を、瑞穂が再起させてくれたんだ」


そう言う健斗の色素の薄い瞳は、もう悲しそうに笑ってなんていなかった。

全てを諦めてしまったような空気を漂わせていた健斗は、いつの間にかどこにもいなくなっていた。

代わりにいるのは、『現在』を生きる、普通の男の子だけ。

私が『死』という形で裏切ったとき、この人はいったいどうなってしまうんだろう──。


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