朝、ふかふかのふとんに埋もれ、最高に幸せな気分で目が覚めた。
 適度な硬さのマットの上で寝返りをうち「あれ?」と思う。このスプリングの利いた感じ、まるでベッドに寝ているみたいだ。我が家の床の、のっぺりした硬さはどこへ行ったのだろう?
 次に「あれ?」と思ったのは、徐々にはっきりしてきた視界に人の顔らしきものを認識したときだ。
「ん……?」
 これって、隣に誰か眠っていませんか? ……誰か?
 私は無意識に手を伸ばしていた。指が人肌に触れる。温かい感触に驚いて反射的に手を引っ込めたのだけど……。
「え、えええええーっ!?」
 その手がふとんの中で大きな手につかまったのだ。
「おはよ」
「お、おはようございます」
「もう少し……寝たい」
 隣に眠っていた人が優輝に見えてびっくりしたのだけど、それが本物の守岡優輝だと気がついてさらに驚愕した。
 眠そうな優輝のまぶたが再びゆっくり閉じる。こうして近くで見ると睫が長い。目を閉じていても、こちらの心に直接何か訴えかけてくるような表情をしている。見つめていたら文字通り心が奪われてしまいそうだ。身の危険を感じ、視線を引きはがす。
「おやすみなさい」
 声をかけても優輝は微動だにしない。真夜中も仕事をしていたのだから、まだ眠いのは当然だ。しかも私の面倒まで見てくれて、すごく疲れただろうな、と思う。
 すっかり目が覚めた私はベッドを抜け出そうとしたが、なぜかしっかりと繋がれたままの手をふりほどけず、仕方がないのでベッドの中でぼんやりと数時間前のできごとを思い出していた。

「寝るぞ」
 パジャマを着た優輝とあらためて向き合った私は、目を見開いて彼を見返し、すぐに視線をそらした。優輝は私に貸してくれたパジャマの色違いを着ている。つまりパジャマがおそろいなのだ。
「あの、私はソファを使わせていただきま……」
「ソファは座る場所だ。つまり未莉は俺と一緒に寝るしかない」
「えっ、ちょっ、そんな、い、いきなり、こまっ、困ります!」
 我ながら笑えるくらいしどろもどろになってしまったが、優輝は真顔で私のほうへ近づき、腕をつかむと廊下へ向かった。
「いや、えっ、でも……」
「何が困るって?」
「だって、私はただのお邪魔虫ですし」
「だから?」
「あの、ご主人様といきなり一緒に寝る、なんて大それたことはできない、と言いますか……」
「ふーん」