どうしてほしいの、この僕に
 だけどまぶたの裏にはオーディションで初めて会った優輝の姿が勝手に再生される。突っ伏していたテーブルから上体を起こし、長い前髪の間から眠そうな目を私に向けたあの瞬間——いきなり心臓が握りつぶされたかのように痛み、腰の奥のほうでとろりと何かがこぼれ出した。
「……ふぁ……っ」
 優輝は器用に下着のホックを外し、両手でふくらみをもてあそび始めた。
 いつの間にか下腹部が溶鉱炉のように熱くなっている。自分の体なのに何が起こっているのかわからない。優輝の指に過剰に反応してしまうのだ。
 クスッと笑う声が聞こえた。
「こっち来いよ」
 優輝の手が私の腰を抱き、体の向きを反転させながら自分のほうへ引き寄せた。背中が彼の胸におさまって、私の胸はふたたび大きな手に包まれる。てのひらが突起をあやすように動く。
「こんなの、恥ずか……し」
「体に力入らないくらい感じてるくせに、まだ恥ずかしいとか言う?」
 耳元で囁かれた。私は肩をすくめながら泣きそうな気持ちで優輝を振り返る。
「感じてなんか……なぃ」
「じゃあ、ここ」
 そう言いながら優輝は人差し指と中指で花の蕾のように尖った部分を挟んだ。
「こんなに硬くしているのはどうして?」
 耳たぶを熱く湿ったものが這う。その瞬間、頼みの綱と思いすがりついていた理性が、あっけなく濁流に押し流された。
「は……っ、ダメ」
「ダメじゃない。その顔、すごくそそられる」
「なに言って……んっ」
「声もかわいいし」
「ちがっ……んぅ」
 優輝は私の首筋にキスを落とす。体をこわばらせる私の太ももをよしよしと慰めるように優輝の右手がなでた。
 その手がするりとスカートの内側に入り込んだ。
「え!?」
「感じていないなら平気だろ?」
「な、ちょっ……平気なわけな……っ」
 フレアスカートを選んだ今朝の自分自身を呪う。これがタイトスカートだったら優輝も少しは手間取ったかもしれないのに。当然のことながら彼の指はやすやすと下着を探り当てた。
「ダメなの、そこは、無理っ」
「大丈夫。感じていないのを確かめるだけだから」
 とても優しい声音が私の耳を震わせる。そんなわけない。私は太ももに力を入れて足を閉じた。
「そういうことすると、これ、脱がす」
「なっ……!」
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