同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
溺愛level1*昇進しました!


――春が好き。特に、四月の始まりが。

何かが始まるような期待と緊張感に満ちた、あの独特の空気。

学生のころに比べたら、春が来たからと言って環境がガラッと変わるわけではないけれど、なんとなく、ピシッと姿勢を正したくなるような気持ちは社会人になった今でも健在。


今年は私にとって大きな節目を迎えた春でもあるから、余計かもしれない。


始業十五分前、オフィスの廊下に貼りだされた辞令を眺めながら、私、難波(なんば)みちるはそんなことを思う。

いつもよりきちんとしたジャケットとペンシルスカート、丁寧に編み込んできたハーフアップの髪。

目尻で引き上げたアイラインで、垂れ目がちな素顔よりはシャープな印象になっているであろう瞳が見つめる先には、こう書いてある。


商品開発部 難波みちる殿――そう、私を。

本日付で、お客様相談室室長(係長)に任命する、と。


< 1 / 236 >

この作品をシェア

pagetop