竜宮城に帰りたい。



***


「おはよ〜」

「み…瑞季ちゃん、おはよう。
礼二くんに慎くんも、先に来てたんだ。」

「俺らは直でこっち来た方が早かったんや」

「そうなんだ…」


『こっち』というのは、八十八ケ所のうち(私たちの中では)1箇所目
弥谷寺(イヤダニジ)の事だ。

本来は70番目くらいの最後の方のお寺らしい。


「ほんだらとっととお参りすんで〜」


晴が面倒くさそうにそう言うと、
みんなが一斉に本堂の方へ歩き出した。



「昨日携帯海に忘れたんやって?」

瑞季ちゃんが私の隣に自然と来て、そう尋ねた。

「え、なんで知ってるの?」

「今さっき祐くんに聞いたんや。」


さすが田舎の連絡網は早い!


「実はそうなんだ。
結構大変だった…」

「お気の毒に。
今日は忘れんようにな。」

「うん、ありがとう…」


瑞季ちゃん、相変わらず優しいなぁ。


私ににっこり笑いかけると、軽やかに走って行って、
今度は晴の隣に並んだ。


なんか見ててすごくしっくり来るなぁ、あの二人。

きっと私と晴ではあんな風にはならない。



そう思いつつも、
さっきの「可愛い」を思い出し、また私の顔は熱くなった。




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