苦しくて、愛おしくて




凛はそれに対して何も返答しない。

ただ熱を帯びた瞳で真っ直ぐ私を見つめるだけ。


幼い頃には無かった、私の知らない凛の瞳。

あんなになんでも知り尽くしていると思っていたのに、最近じゃその自信も無くなってきた。




「鬼だな、おまえは」


ようやく帰ってきた言葉は、理解不能過ぎて余計に凛が分からなくなった。


スッと、髪の毛に伸びる手。

これ以上は逃げようがなくて、困惑に顔を歪ませる。


「……やめた」

「へ」

「帰る、退け」

「って」

退けって、むしろそれはこっちのセリフ。

押しのけるようにベットを下りる凛が、少し乱暴にドアを開けて。


「っ」


そこでくるりと振り返るから
変な緊張がまた背中に走った。


「風呂上がりにベッド上がんなブス」

「なっ、?!」

「キモい」


それだけ言うとバン!と再び扉は閉まる。



あ……あいつ、色々謎すぎ…!



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