楽園
妻の務め
健太郎は最近、華が変わったことに気がついていた。

華は以前より艶っぽくなった。

そして以前より優しくなった。

だけど以前より距離が出来た気がした。


「秋島さん、最近全然誘ってくれないね。」

「うん?忙しくて…」

「華に何かあった?」

絵美は華と同期の健太郎の部下で
そしてこの絵美がホテルの領収証の相手だ。

絵美は同期の中でも優秀でそしてかなりの美人だった。

入社したときは男性社員がわざわざ絵美を見に来たくらいだ。

絵美は健太郎が好きだったが
健太郎が選んだのは華だった。

ぱっとしなくて、さほど綺麗でも無い華を選んだのが
絵美のプライドを大きく傷つけた。

もっとも健太郎にとって絵美は高嶺の花で
最初から相手にされるわけ無いと思っていた。

結婚して華を女として見れなくなったとき
絵美に誘われてそれからの付き合いだ。

家でほとんどお化粧もしない
お洒落もしない華を見ていた健太郎にとって
華やかな絵美は眩しかったのだ。

健太郎が絵美に惹かれるのに時間はかからなかった。

「今夜はアタシの誕生日なの忘れちゃった?
お祝いしてくれなきゃ華にバラしちゃうかも。」

絵美は健太郎を非常階段に連れ出しキスをした。

「わかった。今夜…いつもの場所に7時な。」

しかしその日に限って実家の母が広島から出てくると連絡があった。

「絵美、悪いんだが今日は行けなくなった。
母が田舎から出てきたんだ。」

絵美は不機嫌になったが、
華に呼ばれたワケではないので仕方なく諦めた。

華は健太郎から連絡を貰い、
駅まで義母を迎えにいった。

「華さん、お久しぶりね。元気だった?」

健太郎の母は幸い華のことを気に入っていた。

ただひとつ子供がいないことを
いつも責められてる気がして華にはそれが重荷だった。

案の定、健太郎の母は子供が授かるお守りだとか
漢方薬とかを持ってきて
華に圧力をかける。

華は翔琉との間に子供が出来ないようにピルを飲んでいる。

夜に健太郎が帰ってきてやはり子供の話をしてきた。

その日だけは寝室を一緒にするしかなかった。

最近の華に色気を感じてる健太郎は華を抱こうとした。

華はそれを拒んで
健太郎は少し腹を立てた。

「オレたち夫婦だろ?」

「やめて。お義母さんが居るんだよ?」

それでも健太郎はしつこく迫った。

華はベッドから下りようとした。

「急ににどうしたの?」

「子供作れって言われたろ?

それに最近、お前何か変わったよな?

色っぽくなったよ。

まさか男がいるとかじゃないよな?」

健太郎は冗談で言ったつもりだったが
華は一瞬、顔色が変わった。

そして抵抗出来なくなった。

健太郎は動けなくなった華にキスをした。

翔琉を裏切ってる気がして胸が痛かった。

だけどこれ以上避けることも出来ず
華は仕方なく目を閉じた。

健太郎は久しぶりに違う女を抱いてる気がした。

華は絵美と違って積極的じゃない所が
今の健太郎にとっては逆に新鮮だった。

声も出さす、何かに耐えてるような華をみると
征服欲が出る。

健太郎は華の腕を抑えて
身動きが出来ないようにして華の中で果てた。

終わったあと華が涙を流したのはどうしてなのか
健太郎は全くわかってなかった。

「久しぶりすぎて感動しちゃった?」

健太郎は無神経な言葉をかけてバスルームに行った。

華はまるで暴力を受けたような気分だった。

壁の向こうにいる翔琉を思うと涙が出て止まらなかった。



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