楽園
告白
その夜、華は家に帰らなかった。

健太郎は後悔していた。

華を大切にするって誓って結婚したのに…

絵美のような綺麗な女に誘われて
自分がまだ男としてイケてるなんて勘違いして
華を傷つけた。

華を手放す気などない。

笑ってる華が好きだった。

ちょっと天然で話が食い違う事があっても
そこが可愛いと思ってた。

健太郎が今、思い出すのは華の好きところばかりだった。

「華…ごめん。」

事の重大さに気がついて健太郎は苦悩した。

次の日、華が部屋に戻ると健太郎は会社にも行かず華を待っていた。

「ごめん!絵美とは別れる。もう2度としないから。」

健太郎は華が帰ってくるなり土下座して
額を床に付けて華に謝った。

その姿があまりに情けなくて華は堪らない気持ちになった。

「健ちゃん…謝らなくていいの。アタシも同じだから。」

「え?」

「好きな人がいる。だから…アタシもごめん…」

健太郎はビックリして顔を上げた。

「嘘だよな?
華…怒って嘘ついてるんだよな?
わかってるよ…それくらい。」

笑い飛ばしたけど健太郎は不安になった。

「アタシたち…もう別れよう。」

それが嘘じゃないと健太郎は確信した。

「相手…相手は誰?どんな男だよ?」

「健太郎の知らない人。」

「誰なんだよ!」

健太郎はテーブルを思いきり叩いた。
華はビックリして肩をすくめた。

「健ちゃん、ごめん…」

華が部屋を出ていこうとすると
健太郎が華の腕を掴んで離さなかった。

「その男に会わせろ!」

「健ちゃんがいけないんだよ。」

華が泣き出して健太郎は掴んでいた手を緩めた。

「華…オレが悪かった。
怒ったりしない。
オレのせいでそうなったなら許すから…
その男に会わせてくれ。」

華は首を横に振って泣いていた。

突然、修羅場になったこの部屋で
健太郎は自分を見失っていた。

華への愛は一瞬にして憎しみに変わり
健太郎の中に華への執着が産まれた。

「それでもお前はオレの妻だ。
何があっても…別れないから。」

健太郎は服を着替え部屋を出た。

頭を冷やさなせれば…とネクタイをしめ、
会社へと向かった。

そして絵美を非常階段に呼び出した。

「何で華に逢ったんだ?」

「何にも知らない華が可哀想だと思って。
あの子昔からトロかったでしょ?

でもまさか気付いてたなんてね。

秋島さん、脇が甘過ぎなのよ。」

健太郎は頭にきたが、それが絵美という女だ。

人一倍気が強くて、プライドが高く、
絵美は欲しいものは奪っても手に入れる。

華とは正反対のそんなところに惹かれた自分がいたのも事実だ。

絵美を責めるのは間違ってると思った。

「お前とはもう会わない。」

絵美は呆れて笑った。

「こっちから願い下げよ。
秋島さんには華みたいな女が似合ってる。

でも華は許してくれたの?

もうどうでもいいって感じだったけど…」

「お前に関係ない。」

そして健太郎は興信所に行った。

華の相手をどうしても知りたかった。

そして1週間後、健太郎は相手を突き止めた。


< 7 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop