楽園
贖罪…そして別離
健太郎は病院に運ばれ、
そのまま手術になった。

華は手術室の前で健太郎の無事を祈った。

このまま居なくなってしまったら生きていけないと思った。

幸いにも健太郎は命に別状は無いと言われたが
いつまで経っても意識が戻らなかった。

華はその間、健太郎の手を握り回復するのを待った。

健太郎の両親も華の両親もやって来て
自分のせいで事故に遭ったと悲しむ華をみんなが励ました。

華は罪の意識にかられて健太郎の側を一時も離れなかった。

その頃、いつまでも戻らない華を翔琉は心配していた。

華に起こったことを知ったのは久しぶりにジムにトレーニングに行った時だった。

「あ、海藤さん、華さんどうしてる?
旦那さん無事だったのかしら?」

翔琉は何の事か全く分からなかった。

「華さんに何かあったんですか?」

「海藤さん、お隣なのに知らないの?
華さんのご主人が先週大通りで事故に遭って救急車で運ばれたって…
華さんが付き添って救急車に乗るところを山本さんが偶然見たらしいの。

だいぶ取り乱してて可哀想だったって。」

翔琉は呆然とした。

3年前の記憶がフラッシュバックして
翔琉は倒れそうになった。

「海藤さん、大丈夫?
顔が真っ青よ。」

また自分のせいで好きな人を不幸にしたと
翔琉は自分の事が恐ろしくなった。

華に連絡したが、繋がらなかった。
SNSにメッセージを送ってみてもいつまでも華は読んで無いようだった。

逢いにも行けず翔琉はただ華からの連絡を待つことしか出来なかった。

次の日、華がマンションに戻ってきたので
翔琉は華に逢いに行こうとした。

しかし、華は母親と一緒にいて
近づく事も出来なかった。

華から連絡があったのはそれから3日経った夜だった。

「心配してたよ。」

翔琉の声を聞いて華は泣いていた。

「ごめんなさい。もう逢えない。
アタシのせいで健ちゃんがあんなことになって…」

翔琉は華の気持ちが痛いほどわかった。

だから華を手放すことにした。

「わかったよ。華がそうしたいならオレは華に従う。
だけど旦那さんの事は華のせいじゃないよ。
だから背負い込まないで。」

華が翔琉に別れを告げた直後、
健太郎は意識を取り戻した。

「健ちゃん…ごめん。アタシのせいで…」

泣いて謝る華を見て健太郎はただ笑って髪を撫でた。

そして翔琉とのことは口に出さなかった。

華が帰ってきたと思ったからだ。

このまま無かったことにしようとお互いが思っていた。

そして健太郎が退院すると
華は健太郎と違う街に引っ越して行った。

そして翔琉も華の思い出が残るその場所にいるのが辛くなって
半年後に違う場所に引っ越した。


< 9 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop