恋色流星群



体は航大のTシャツの中で、見事に泳いだ。


一応、チョコの出してくれた短パンにも足を通してみるけど。
腰で止まるどころか、すとんと真っ直ぐ床へ落ちてしまう。



諦めよう。
いつも見上げる並び位置。

航大のお召し物が、チビな私を気にいるわけがない。



首に回った時の、腕が太いとか固いとか。

押しつけられた胸が、広いとか厚いとか。


そういうことより、このサイズ感のほうが客観的に航大の大きさを見せつけてきて。


なぜか胸がきゅうっとした。










リビングのドアを開けると真っ暗な部屋で、チョコはテレビを見ていた。




『何見てるの~?』



濡れた髪を拭きながら、ソファの上で胡座をかく彼の隣に座る。

テーブルには、小さなワインのボトルと。

何本かの、倒れたビールの缶。







「気持ちよかった?」


ふわんと笑った顔に、テレビの光が反射して。

黒い瞳がとろんと濡れて見えて、一瞬ドキッとする。

・・・泣いて、ない、よね。






『あ・・・これ、好きなやつ!』



大画面のテレビには。

私の大好きな、可愛い子豚が大奮闘する有名な映画が。



「まじかー、俺初めて見たんだけど。これやばいね。」

『リアルタイムでやってんの?』

「いや、これDVDだよ。航さんの。」

『まじで!笑える!なんでこんなの持ってんの?笑』





ワインのボトルが気になって手を伸ばすと。



「理沙も飲む?」


チョコが立ち上がって、キッチンに向かった。


『見たことないワインだ。どこの?美味しそう。』

「分かんない。それも航さんの。」




はい、とチョコがワイングラスに注いだ赤いシロップを差し出す。

ふわっと鼻に抜ける、葡萄の渋さと濃厚な香り。




『うまー!』

「ね。」







チョコの優しさは。

到底当たり前にはできない、先回りした思いやりを。
何でもないことかのように見せかけて、すっとそこに置いていくこと。


相手が気づけばいいし。
気づかなくても、いいし。

私はその思いやりに、漏れなく気づいていきたいと思うけど。


きっと本当は、漏れてばかりなんだろうな。








『私、男友達はチョコだけでいいって思う。』

「おー。嬉しいね、それ。」

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