私に恋してくれますか?
「いや、すぐに出て行くくらいなら、家に戻ってよ。
世間知らずのお嬢のピーコの1人暮らしなんて、
心配で、気になるから。
…家出させたのは俺だし、
しばらくは俺が新しい保護者ね。
まあ、面倒を見てくれるオトコでも出来たら出て行けば?」

「…今はトオル君が保護者?」

「保護者なしで、1人暮らししたいなら、
普通に生活できるようになってよ。
まあ、しばらくかかりそうだけど?」とバカにしたようにくすんと笑う。

かなり腹立たしいけど、
ここを今すぐに出て行く事は出来なさそうだ。

普通の暮らしを学ばなければ。
私は唇を噛み締め、

「お世話になります。」と頭を下げた。

「じゃ、仕事中は恋人って事で」

と私をぐいっと引き寄せ、そっと抱きしめた。

私は声を出せずに、トオル君の腕の中で赤くなって下を向く。

「コーヒー淹れたら、仕事を終わりにしていいよ。」
とトオル君が他の2人に聞こえるくらいの大きな声で言ったので、

「俺もコーヒー。」と他の2人も声を出す。
私が抱きしめられているのが見えたはずだけど、
気にも留めていないみたいだ。

恥ずかしい。

恋人って
みんなこんな風に急に抱きしめてくるんだろうか?
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