los episodios de suyos
4.espiritu solida
 頭上に吊られている四本の縄と、二つの空中ブランコ。用具入れから今にも溢れてきそうな、ボールやこん棒。壁のフックにかかった、色とりどりのフラフープ。広々とした運動スペースには、今日も私が一番乗りだ。

 みんなが来る前に道具のチェックを終え、既に活動できる状態にしておく。いつしかそれが、自分の役目だと思うようになっていたのかもしれない。

 団長にスカウトされたのは、まだ10代の頃。彼がコレギオ(日本でいう私立高校)の運動会で、私のアクロバット演技を見たことがきっかけだった。団長に招待され初めてサーカスを観て、感銘を受けた。そして、学校を卒業すると同時に入団し、今に至るという訳だ。



『――ソニア、おはよう。今日も早いな。』

『団長、おはようございます!あと少しで終わるから、ちょっと待っててくれる?』

『僕も手伝おう。二人でやる方が効率も良い。』



 そう言って微笑んだ団長にお礼を告げ、準備を続ける。間もなくそれも完了し、他の団員達がぞろぞろと集まってきた。

 ――これから、私達の一日が始まるのだ。
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