向日葵の天秤が傾く時
「いいから離せってんだろっ!」


「痛っ!痛ってーな!お前、今殴ったよな。訴えてやるからな!」


「は?……っ!ちょっ……!!」



男が巫莵を突き飛ばすように寄越した為、驛は男を追い掛けることが出来なかった。



「衢肖さん大丈夫ですか?」


「大丈夫…。砧怙さんすみません、ありがとうございます。でも訴えるって…」


「問題ないです。訴えるなんて口先だけで出来やしませんよ。」



「しかも殴ったって、肘が当たっただけじゃない!何なのあの男、知り合いですか?」


「い、いや………。とりあえず、行きましょ!遅刻しちゃいますから!」



曖昧に濁された気もするが、巫莵の言う通り出勤時間も迫っているので3人は歩き出す。


その日はクライアントが立て続けで、今朝のことを話題に出す暇も無く過ぎていった。



事が動いたのは翌日、アポイントの無い一人の男が訪ねてきたことに始まった。



「いらっしゃいませ。」


「私財占法律事務所の弁護士、寒紺阜紆奢(サコン フウシャ)と申します。砧怙驛様はいらっしゃいますでしょうか?アポは取っていないのですが、昨日の件だとお伝え頂ければご理解頂けると思います。」
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